読んだ本(2019)
2019年読了本まとめ
覚書代わりにペタリ
一部ネタバレ感想付
昨年分では
青春のほろ苦さがぐっとくる日常の謎系ミステリ
「本と鍵の季節」
日常の謎系のロジカル部分の面白さがよく出ている
「ほうかご探偵隊」
若手新人の悪戦苦闘の先で光明をみる元気がもらえたオシゴト小説
「プリティが多すぎる」
以上辺りが誰かにお勧めしてみたい感じでした
個人的読書量としては
月2冊ペースくらいからここ数年は伸びず
もろ仕事での精神状況に依存されるので
読む気が起きない月が多すぎるのですよねぇorz
覚書代わりにペタリ
一部ネタバレ感想付
昨年分では
青春のほろ苦さがぐっとくる日常の謎系ミステリ
「本と鍵の季節」
日常の謎系のロジカル部分の面白さがよく出ている
「ほうかご探偵隊」
若手新人の悪戦苦闘の先で光明をみる元気がもらえたオシゴト小説
「プリティが多すぎる」
以上辺りが誰かにお勧めしてみたい感じでした
個人的読書量としては
月2冊ペースくらいからここ数年は伸びず
もろ仕事での精神状況に依存されるので
読む気が起きない月が多すぎるのですよねぇorz
2019年の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:6846
ナイス数:193
スガリさんの感想文はいつだって斜め上 (5分シリーズ+)の感想
斜め上の視点から文学作品の考察感想文を書く変わり者の女子高生とそれを部活として読まされる事になった気弱な家庭科男子教諭の日常の謎系学園ミステリ。キャラ小説分野では奇を衒いすぎた個性をつける事で物語と噛みあわず、滑る作品も多いが、本作の個性としてもってきた「読書感想文」という手段は違和感なく物語に落とし込めており、邪魔になる事なく作品の面白さへと繋がっている印象。後はミステリ部分のロジカルさが今巻以上の一定水準で保たれれば、楽しみなシリーズになりそう
読了日:11月10日 著者:平田駒
よろず屋お市: 深川事件帖 (ハヤカワ時代ミステリ文庫)の感想
不審な突然の死を迎えた元岡っ引きの養父のなんでも屋家業を継いだ女性が亡き養父から仕込まれた考え方や体術をもって、持ち込まれる厄介事の解決に危なっかしくも奔走する時代小説。捕物、謎解きとしては軽めの話で1時間ものの時代劇のノリ。人物描写、事件の中身、時代背景、生活感の描写含め、良くも悪くも軽く、読みやすい。養父の不審死は裏があると匂わせつつも真相には一切触れずという所からもシリーズの初刊となると思われるので人物の内面や成長、街の生活感の描写などの面を描き込み、シリーズ重ねる中で世界観を深められると面白いか。
読了日:11月09日 著者:誉田 龍一
スレイヤーズ17 遥かなる帰路 (ファンタジア文庫)の感想
長編第3部開幕。オールドファンには待望というか感慨深い「外」の世界編。新しいキャラを迎えつつも筆致は先巻より変わらず良くも悪くも昔のままで2部からの3部としても違和感はないライトに読めるノベルらしさは健在。その辺り支えるのは物語の詳細は思い出せずとも想いだせるキャラ造形や今や古典源流ともなった一時代を築いた魔族や呪文をはじめとしたファンタジー世界観あればこそというところでしょうか
読了日:10月19日 著者:神坂 一
虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)の感想
妖という世間的には虚構の存在からの相談の解決の為に真実の上に、辻褄の合った都合の良い虚構の論理を積み上げる、虚構推理シリーズの五編から成る短編集。元々切り口の面白さがある作品設定のところに、イロモノ的な問題提起から始めたり、語り手の視点を変えたりと五編それぞれ一辺倒の色になっておらず、めでたしめでたしでは終わらない結末含め面白い。その上でこの著者さんらしく積み上げる論理もしっかりしており、膝を打つ虚構が積み上げられる様にはこのシリーズらしいカタルシスがありました
読了日:10月11日 著者:城平 京
プリティが多すぎるの感想
ローティーン女性ファンション誌へ望まぬ異動をくらった新米男性編集者の奮闘と彼の目線から描かれる十代モデルたちと彼女たちを輝かせるプロたちのお仕事物語。プロだからこその厳しさ、苦さの要素と関わる人たちの情熱など前向きな要素の描き方のバランス感覚がよく、本気で取り組めば、本気と出会える、手に入るモノがあるという何やかんや元気をもらえる読後感がよい。著者の作品は本屋勤めの物語だったり等をいくつか読んでいますが、お仕事の現場のバックヤードを覗く雰囲気の描写が巧く世界観に引き込まれます
読了日:10月11日 著者:大崎 梢
ようこそ実力至上主義の教室へ11.5 (MF文庫J)の感想
1年生編エピローグ、次章への布石回。相変わらずヒロイン定めずのギャルゲーの共通ルート選択イベントのテイストでのあっちこっちでフラグイベントなノリは小説としては少々とっ散らかってる印象になるのは作品の方向性としては仕方ない所か。個人的な印象では軽井沢さんとの共犯関係的な距離感が好きだったのでより一方通行感が大きくなったと見れなくもない今回のラストは巧く描いてくれる事を期待したい気持ち半分、より中途半端な描写になっていく可能性への危機感半分の評価保留な感じで読後感が少々スッキリしなかったかな
読了日:09月28日 著者:衣笠彰梧
ほうかご探偵隊 (創元推理文庫)の感想
小学生が「不用品連続消失事件」の解決の為,探偵ごっこで挑む謎解き小説。キャラクター性、物語性については正直弱いと思うが、パズル小説の面白さとでも言えばいいのかロジカルな物語の組み立てが秀逸なミステリ作品。しっかりとパズルのピースを用意してそれを順番に組み上げていくのを見ているような昂揚感、楽しさのある読み心地だった。
読了日:08月17日 著者:倉知 淳
失恋探偵ももせ (電撃文庫)の感想
恋の終わりの物語を解き明かす「失恋探偵」が失恋の物語の中に恋を見つける物語。学園青春モノ×日常の謎連作短編系テイストと一所ラノベ界隈でも流行った作風に失恋関連という縛りをつけた作品。真相やそこへの辿りつき方があからさまだったり、少々無理筋だったりといった粗さがあるので日常の謎系としては読めませんが、青春モノとしてはテーマに一貫性を持たせた事で少しの切なさが同居した柔らかい物語として雰囲気が統一され、読み心地の良い作品でした
読了日:08月12日 著者:岬 鷺宮
中野のお父さん (文春文庫)の感想
若き体育会系文芸編集者の娘をワトソン役、高校の国語教師の父をホームズ役とする日常の謎系ミステリ。短編集で各編の読み口は軽いものが多いが、ロジックがしっかりしているのは流石感。良くも悪くもある一定の教養がないと難解さが出てくる文学回りの謎解き、言葉選びは筆者の他の作品を読んでいるとまさに「らしい」と感じられる文体で主役である父娘の距離感含め、作品全体が柔らかい雰囲気で心地よかった
読了日:08月03日 著者:北村 薫
ようこそ実力至上主義の教室へ11 (MF文庫J)の感想
1年生編ラスト・綾小路vs坂柳の学年内頂上決戦。坂柳の一方通行的な始まりからの綾小路とのある種の幼馴染的感情の一つの帰結は好みでよかった。全体としては話の幹、試験戦描写はいつも通り淡泊。ただ単巻区切りだった為、比較的間延びせず読めた。一方で坂柳はじめ、恵、堀北、一之瀬といった所を優劣ないヒロイン候補格として単発のイベントシチュの挿入で描いていく書き方は著者の出身であるギャルゲシナリオ的で好きな人間にとっては刺さりやすい安定感ある筆致。故、その手のシチュ重視の作品を楽しめる層には今後も期待できる出来か。
読了日:06月08日 著者:衣笠彰梧
晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と (講談社タイガ)の感想
心に傷を抱えた大学生・春近が片想いする訳ありそうだけど、温かな雰囲気を纏った人妻ひまりさんをはじめとした人たちとの交流―隠した本音に触れたり、すれ違いそうな想いの錯綜を解きほぐす優しいお節介だったりといった関わり合いを経て、切ないながらも幸せな新しい自分へと変わり始める物語。終盤の春近が自分の変化に気づく件はじめ、絵になる情景や何気ない日常の一場面の独白から描きだされる切ない心情の暖かさや柔らかさ、ままならぬ片想いという状況に象徴される小さな切なさを伴う穏やかな空気感が優しい気持ちにさせてくれる作品だった
読了日:04月13日 著者:野村 美月
本と鍵の季節の感想
図書委員の男子高校生二人の日常の謎ミステリ。さり気なく卒のない伏線の張り方が見事で読みやすく物語に没入させてくれる。本と鍵に纏わる謎はどの結末もどこかほろ苦く、連作短編としての見事な収束を見せるラストもまた同じ。そんなモノはないと達観しようしつつも、どこかで守るべき「正しさ」がある事を信じたい、そんなこの年頃らしい倫理観を持つ二人の気の置けない何でもないやり取りが取り戻せない過ぎ去ってしまった物になってしまうかもしれない。ただまだ希望の全てが消えてしまった訳ではない。その余韻に青春小説的な側面も感じた。
読了日:03月24日 著者:米澤 穂信
雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)の感想
因習残る村にやってきた来訪者は村のかんなぎの娘と末永く幸せに暮らしましたとさとなる伝奇+ミステリ。著者の「虚構推理」と同じく超常的な舞台の中において「ルール」を見極め、「論理」を組み上げ、望む結末という「解」を得るというミステリをやって見せる構成が実に面白い。話の筋は不幸や理不尽に見舞われる主人公が長年努力で積み上げてきたモノを武器に因習に囚われていたヒロインを救いだすという王道筋でカタルシスがありますし、そのヒロインとの関係性も軽妙で楽しませてくれる作品でした。
読了日:02月25日 著者:城平 京
死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~ (メディアワークス文庫)の感想
永遠の命を持つという生徒を巡る殺人事件。犯人は?永遠の命の真相とは?世にも奇妙なライトサイコホラーテイストミステリ風。骨子となる構成がしっかりしており、ぞわぞわする余韻残すラスト含め適度なあっさり感でいい意味で手ごろな大きさにまとまっている作品で読みやすく楽しめた
読了日:02月21日 著者:野崎 まど
はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)の感想
普通のJKが異世界冒険譚のメインヒロイン・たたかうJKさま!として名実共に名を馳せる。JKちーちゃんの成長譚ひとつの到達点巻。バレンタインネタをラブコメのスパイスにしつつもメインはいつもの貫禄ついたちーちゃんの行動にヘタレ魔王さまらファンタジーな面々が翻弄されるの図が爽快。今回は利香も何気に振り切った感あって地球女子強しを見たw自分の中で何を芯にして自分の進む道をどう決めて何を大切に進むのか。その理由は人それぞれ。それは大きくても小さくてもよくて、少なくともちーちゃんのそれはとても清々しくてよかった。
読了日:02月13日 著者:和ヶ原聡司
はたらく魔王さまのメシ! (電撃文庫)の感想
「食」をネタにした短編集。ファンタジー世界の住人が現代日本で慎ましい日常を送る為に右往左往するコメディ。その為、良くも悪くも1冊丸々やられると作品としては山がなく平坦に感じる部分が出てしまうのは仕方ないところか。とはいえ、魔王やちーちゃんなど文化的なギャップから自身を見つめ直したり、その見識が広がる瞬間が感じられる描写は相変わらず良い清々しさがあって好ましい。
読了日:02月12日 著者:和ヶ原 聡司
ドリームダスト・モンスターズ (幻冬舎文庫)の感想
ツンデレJKと他人の夢に潜れる祖母の能力を受け継ぐお調子者男子高校生のコンビで悪夢に悩む依頼者の夢に入ってそこにある人の悪意やら何やらと向き合う著者の代表作とテイストがよく似たオカルト物。ホーンテッドハイスクール。件の代表作に比べるとファンタジー要素が強く、設定へのリアリティや整合性を気にすると辛いが、キャラ小説、ラノベ系統と割り切れば、各編、話の骨子自体はこちらも短編のオカルト人情モノとして手堅い出来で手軽に読めて楽しめる良作
読了日:01月31日 著者:櫛木 理宇
PCP -完全犯罪党- 孤島の子供たち (JUMP j BOOKS)の感想
バクマンの劇中作のノベライズ化…として読むと漫画で受けた印象との齟齬があり、違和感が出てくるが,単体で見れば日常の謎系ミステリの書き手である著者のカラーが出た生き生きとしたキャラクターで物語を進める児童文学寄りのミステリ物として良い雰囲気がある。ただ一方でそれは原作のスピンオフという観点から外れての評価となるので,劇中作のシリーズ中の外伝の1冊とテイストのこれ1冊だと前説やエピローグにやや物足りなさが読後に残り、キャラクター描写の活き活きとした魅力の分、惜しさが印象として先行してしまうかな
読了日:01月28日 著者:亜城木 夢叶,初野 晴
ようこそ実力至上主義の教室へ10 (MF文庫J)の感想
ステージの拡大、キャラ紹介で2年3年含めて登場人物が増えすぎてとっ散らかっていた近巻に比べて主要所が比較的絞られた規模の策略戦で近刊では読みやすさはあった。清隆の実力を認めた過去の対戦者との共闘展開はお約束だけど熱くなれるモノがあって上々。今巻、主人公が着々と学園内で強敵と書いてライバルやら友と呼ぶみたいな関係になりそうな描写を重ねている事やアレな大人勢力が前面に出てきている事を見るとぼちぼち子供vs大人みたいな構図に突っ込んで行ったりするのかしらん
読了日:01月26日 著者:衣笠彰梧
ようこそ実力至上主義の教室へ9 (MF文庫J)の感想
全ては清隆様の掌の上の俺ツェー策略ラノベ第9巻。最後の種明かしのカタルシスが全ての作品なので,そこまでの退屈な淡々とした進行をどう読ませるかが重要な作品。その観点から行くとラブコメ要員・軽井沢嬢がバレンタインネタ含め、良い仕事していますし、策略対決の伏線の仕込みは元々大雑把な作風なのだからもう少し前半に学園ラブやらコメやらの分量を増やした方が間口が広がるか。せっかくラストで新しいヒロイン候補が増えたようですしw
読了日:01月26日 著者:衣笠彰梧
じゅっさいのおよめさん (講談社ラノベ文庫)の感想
10歳になってしまったJK同級生とのひと夏の同居生活。接点がないと思っていた同級生が実は自分に好意を持っていて10歳になってしまった理由はお約束の主人公の少年への献身から。物語の構成要素はそういったラブコメの王道で構成されていて読みやすくはあるが、そのストーリーの骨子に対する肉付けやブラッシュアップがなされておらず、感情移入できる物語にはなっていなかったかな。不思議要素の説明係のお姉さんの役どころの中途半端さなどが特に顕著
読了日:01月23日 著者:三門 鉄狼
青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない (電撃文庫)の感想
「お兄ちゃん」になって「大人」になった少年が自覚した事。高校生編の締め主人公・咲太編。彼のここまでの道程を否定するかのような問題提起から始まる物語。結末は頑張ったからこそ得られた物の再確認からの新しいスタートで高校生編の締めに相応しい。感じたのは思春期症候群の発症は,目の前の現実から逃げるための弱さの証左ではなく、自分の足で歩む事を大切にしている、まっすぐな強さ、「乗り越える」意志ある事の証だったのかもと思ったり。自身が積み上げた絆に背を押されながらありたい自分を選択し続ける咲太の姿にそんな強さを見た
読了日:01月09日 著者:鴨志田 一
青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない (電撃文庫)の感想
一歩一歩私のペースで進む私の道。優しさが繋がって紡がれる新章スタートのエピローグにしてプロローグ花楓編。思春期症候群の試練を乗り越えた先で地に足をつけてゆっくりと自分らしさを取り零さないように進む事の尊さを梓川兄妹の何気ない、でも何物にも代え難い冬の日の日々を通し描く。ファンタジー要素の思春期症候群は前振りのみでじっくりと迷いながらも未来に向けて確かな一歩を踏み出す花楓を描く前巻のエピローグ的な位置づけの物語で多くの人の出会い後押しを受けながら自ら一歩踏み出す彼女の姿がとても清々しい気持ちにさせてくれた
読了日:01月09日 著者:鴨志田 一
読書メーター
▼関連記事
読んだ本(2018)
読んだ本(2017)
読んだ本(2016)

にほんブログ村


読んだ本の数:23
読んだページ数:6846
ナイス数:193

斜め上の視点から文学作品の考察感想文を書く変わり者の女子高生とそれを部活として読まされる事になった気弱な家庭科男子教諭の日常の謎系学園ミステリ。キャラ小説分野では奇を衒いすぎた個性をつける事で物語と噛みあわず、滑る作品も多いが、本作の個性としてもってきた「読書感想文」という手段は違和感なく物語に落とし込めており、邪魔になる事なく作品の面白さへと繋がっている印象。後はミステリ部分のロジカルさが今巻以上の一定水準で保たれれば、楽しみなシリーズになりそう
読了日:11月10日 著者:平田駒

不審な突然の死を迎えた元岡っ引きの養父のなんでも屋家業を継いだ女性が亡き養父から仕込まれた考え方や体術をもって、持ち込まれる厄介事の解決に危なっかしくも奔走する時代小説。捕物、謎解きとしては軽めの話で1時間ものの時代劇のノリ。人物描写、事件の中身、時代背景、生活感の描写含め、良くも悪くも軽く、読みやすい。養父の不審死は裏があると匂わせつつも真相には一切触れずという所からもシリーズの初刊となると思われるので人物の内面や成長、街の生活感の描写などの面を描き込み、シリーズ重ねる中で世界観を深められると面白いか。
読了日:11月09日 著者:誉田 龍一

長編第3部開幕。オールドファンには待望というか感慨深い「外」の世界編。新しいキャラを迎えつつも筆致は先巻より変わらず良くも悪くも昔のままで2部からの3部としても違和感はないライトに読めるノベルらしさは健在。その辺り支えるのは物語の詳細は思い出せずとも想いだせるキャラ造形や今や古典源流ともなった一時代を築いた魔族や呪文をはじめとしたファンタジー世界観あればこそというところでしょうか
読了日:10月19日 著者:神坂 一

妖という世間的には虚構の存在からの相談の解決の為に真実の上に、辻褄の合った都合の良い虚構の論理を積み上げる、虚構推理シリーズの五編から成る短編集。元々切り口の面白さがある作品設定のところに、イロモノ的な問題提起から始めたり、語り手の視点を変えたりと五編それぞれ一辺倒の色になっておらず、めでたしめでたしでは終わらない結末含め面白い。その上でこの著者さんらしく積み上げる論理もしっかりしており、膝を打つ虚構が積み上げられる様にはこのシリーズらしいカタルシスがありました
読了日:10月11日 著者:城平 京

ローティーン女性ファンション誌へ望まぬ異動をくらった新米男性編集者の奮闘と彼の目線から描かれる十代モデルたちと彼女たちを輝かせるプロたちのお仕事物語。プロだからこその厳しさ、苦さの要素と関わる人たちの情熱など前向きな要素の描き方のバランス感覚がよく、本気で取り組めば、本気と出会える、手に入るモノがあるという何やかんや元気をもらえる読後感がよい。著者の作品は本屋勤めの物語だったり等をいくつか読んでいますが、お仕事の現場のバックヤードを覗く雰囲気の描写が巧く世界観に引き込まれます
読了日:10月11日 著者:大崎 梢

1年生編エピローグ、次章への布石回。相変わらずヒロイン定めずのギャルゲーの共通ルート選択イベントのテイストでのあっちこっちでフラグイベントなノリは小説としては少々とっ散らかってる印象になるのは作品の方向性としては仕方ない所か。個人的な印象では軽井沢さんとの共犯関係的な距離感が好きだったのでより一方通行感が大きくなったと見れなくもない今回のラストは巧く描いてくれる事を期待したい気持ち半分、より中途半端な描写になっていく可能性への危機感半分の評価保留な感じで読後感が少々スッキリしなかったかな
読了日:09月28日 著者:衣笠彰梧

小学生が「不用品連続消失事件」の解決の為,探偵ごっこで挑む謎解き小説。キャラクター性、物語性については正直弱いと思うが、パズル小説の面白さとでも言えばいいのかロジカルな物語の組み立てが秀逸なミステリ作品。しっかりとパズルのピースを用意してそれを順番に組み上げていくのを見ているような昂揚感、楽しさのある読み心地だった。
読了日:08月17日 著者:倉知 淳

恋の終わりの物語を解き明かす「失恋探偵」が失恋の物語の中に恋を見つける物語。学園青春モノ×日常の謎連作短編系テイストと一所ラノベ界隈でも流行った作風に失恋関連という縛りをつけた作品。真相やそこへの辿りつき方があからさまだったり、少々無理筋だったりといった粗さがあるので日常の謎系としては読めませんが、青春モノとしてはテーマに一貫性を持たせた事で少しの切なさが同居した柔らかい物語として雰囲気が統一され、読み心地の良い作品でした
読了日:08月12日 著者:岬 鷺宮

若き体育会系文芸編集者の娘をワトソン役、高校の国語教師の父をホームズ役とする日常の謎系ミステリ。短編集で各編の読み口は軽いものが多いが、ロジックがしっかりしているのは流石感。良くも悪くもある一定の教養がないと難解さが出てくる文学回りの謎解き、言葉選びは筆者の他の作品を読んでいるとまさに「らしい」と感じられる文体で主役である父娘の距離感含め、作品全体が柔らかい雰囲気で心地よかった
読了日:08月03日 著者:北村 薫

1年生編ラスト・綾小路vs坂柳の学年内頂上決戦。坂柳の一方通行的な始まりからの綾小路とのある種の幼馴染的感情の一つの帰結は好みでよかった。全体としては話の幹、試験戦描写はいつも通り淡泊。ただ単巻区切りだった為、比較的間延びせず読めた。一方で坂柳はじめ、恵、堀北、一之瀬といった所を優劣ないヒロイン候補格として単発のイベントシチュの挿入で描いていく書き方は著者の出身であるギャルゲシナリオ的で好きな人間にとっては刺さりやすい安定感ある筆致。故、その手のシチュ重視の作品を楽しめる層には今後も期待できる出来か。
読了日:06月08日 著者:衣笠彰梧

心に傷を抱えた大学生・春近が片想いする訳ありそうだけど、温かな雰囲気を纏った人妻ひまりさんをはじめとした人たちとの交流―隠した本音に触れたり、すれ違いそうな想いの錯綜を解きほぐす優しいお節介だったりといった関わり合いを経て、切ないながらも幸せな新しい自分へと変わり始める物語。終盤の春近が自分の変化に気づく件はじめ、絵になる情景や何気ない日常の一場面の独白から描きだされる切ない心情の暖かさや柔らかさ、ままならぬ片想いという状況に象徴される小さな切なさを伴う穏やかな空気感が優しい気持ちにさせてくれる作品だった
読了日:04月13日 著者:野村 美月

図書委員の男子高校生二人の日常の謎ミステリ。さり気なく卒のない伏線の張り方が見事で読みやすく物語に没入させてくれる。本と鍵に纏わる謎はどの結末もどこかほろ苦く、連作短編としての見事な収束を見せるラストもまた同じ。そんなモノはないと達観しようしつつも、どこかで守るべき「正しさ」がある事を信じたい、そんなこの年頃らしい倫理観を持つ二人の気の置けない何でもないやり取りが取り戻せない過ぎ去ってしまった物になってしまうかもしれない。ただまだ希望の全てが消えてしまった訳ではない。その余韻に青春小説的な側面も感じた。
読了日:03月24日 著者:米澤 穂信

因習残る村にやってきた来訪者は村のかんなぎの娘と末永く幸せに暮らしましたとさとなる伝奇+ミステリ。著者の「虚構推理」と同じく超常的な舞台の中において「ルール」を見極め、「論理」を組み上げ、望む結末という「解」を得るというミステリをやって見せる構成が実に面白い。話の筋は不幸や理不尽に見舞われる主人公が長年努力で積み上げてきたモノを武器に因習に囚われていたヒロインを救いだすという王道筋でカタルシスがありますし、そのヒロインとの関係性も軽妙で楽しませてくれる作品でした。
読了日:02月25日 著者:城平 京

永遠の命を持つという生徒を巡る殺人事件。犯人は?永遠の命の真相とは?世にも奇妙なライトサイコホラーテイストミステリ風。骨子となる構成がしっかりしており、ぞわぞわする余韻残すラスト含め適度なあっさり感でいい意味で手ごろな大きさにまとまっている作品で読みやすく楽しめた
読了日:02月21日 著者:野崎 まど

普通のJKが異世界冒険譚のメインヒロイン・たたかうJKさま!として名実共に名を馳せる。JKちーちゃんの成長譚ひとつの到達点巻。バレンタインネタをラブコメのスパイスにしつつもメインはいつもの貫禄ついたちーちゃんの行動にヘタレ魔王さまらファンタジーな面々が翻弄されるの図が爽快。今回は利香も何気に振り切った感あって地球女子強しを見たw自分の中で何を芯にして自分の進む道をどう決めて何を大切に進むのか。その理由は人それぞれ。それは大きくても小さくてもよくて、少なくともちーちゃんのそれはとても清々しくてよかった。
読了日:02月13日 著者:和ヶ原聡司

「食」をネタにした短編集。ファンタジー世界の住人が現代日本で慎ましい日常を送る為に右往左往するコメディ。その為、良くも悪くも1冊丸々やられると作品としては山がなく平坦に感じる部分が出てしまうのは仕方ないところか。とはいえ、魔王やちーちゃんなど文化的なギャップから自身を見つめ直したり、その見識が広がる瞬間が感じられる描写は相変わらず良い清々しさがあって好ましい。
読了日:02月12日 著者:和ヶ原 聡司

ツンデレJKと他人の夢に潜れる祖母の能力を受け継ぐお調子者男子高校生のコンビで悪夢に悩む依頼者の夢に入ってそこにある人の悪意やら何やらと向き合う著者の代表作とテイストがよく似たオカルト物。ホーンテッドハイスクール。件の代表作に比べるとファンタジー要素が強く、設定へのリアリティや整合性を気にすると辛いが、キャラ小説、ラノベ系統と割り切れば、各編、話の骨子自体はこちらも短編のオカルト人情モノとして手堅い出来で手軽に読めて楽しめる良作
読了日:01月31日 著者:櫛木 理宇

バクマンの劇中作のノベライズ化…として読むと漫画で受けた印象との齟齬があり、違和感が出てくるが,単体で見れば日常の謎系ミステリの書き手である著者のカラーが出た生き生きとしたキャラクターで物語を進める児童文学寄りのミステリ物として良い雰囲気がある。ただ一方でそれは原作のスピンオフという観点から外れての評価となるので,劇中作のシリーズ中の外伝の1冊とテイストのこれ1冊だと前説やエピローグにやや物足りなさが読後に残り、キャラクター描写の活き活きとした魅力の分、惜しさが印象として先行してしまうかな
読了日:01月28日 著者:亜城木 夢叶,初野 晴

ステージの拡大、キャラ紹介で2年3年含めて登場人物が増えすぎてとっ散らかっていた近巻に比べて主要所が比較的絞られた規模の策略戦で近刊では読みやすさはあった。清隆の実力を認めた過去の対戦者との共闘展開はお約束だけど熱くなれるモノがあって上々。今巻、主人公が着々と学園内で強敵と書いてライバルやら友と呼ぶみたいな関係になりそうな描写を重ねている事やアレな大人勢力が前面に出てきている事を見るとぼちぼち子供vs大人みたいな構図に突っ込んで行ったりするのかしらん
読了日:01月26日 著者:衣笠彰梧

全ては清隆様の掌の上の俺ツェー策略ラノベ第9巻。最後の種明かしのカタルシスが全ての作品なので,そこまでの退屈な淡々とした進行をどう読ませるかが重要な作品。その観点から行くとラブコメ要員・軽井沢嬢がバレンタインネタ含め、良い仕事していますし、策略対決の伏線の仕込みは元々大雑把な作風なのだからもう少し前半に学園ラブやらコメやらの分量を増やした方が間口が広がるか。せっかくラストで新しいヒロイン候補が増えたようですしw
読了日:01月26日 著者:衣笠彰梧

10歳になってしまったJK同級生とのひと夏の同居生活。接点がないと思っていた同級生が実は自分に好意を持っていて10歳になってしまった理由はお約束の主人公の少年への献身から。物語の構成要素はそういったラブコメの王道で構成されていて読みやすくはあるが、そのストーリーの骨子に対する肉付けやブラッシュアップがなされておらず、感情移入できる物語にはなっていなかったかな。不思議要素の説明係のお姉さんの役どころの中途半端さなどが特に顕著
読了日:01月23日 著者:三門 鉄狼

「お兄ちゃん」になって「大人」になった少年が自覚した事。高校生編の締め主人公・咲太編。彼のここまでの道程を否定するかのような問題提起から始まる物語。結末は頑張ったからこそ得られた物の再確認からの新しいスタートで高校生編の締めに相応しい。感じたのは思春期症候群の発症は,目の前の現実から逃げるための弱さの証左ではなく、自分の足で歩む事を大切にしている、まっすぐな強さ、「乗り越える」意志ある事の証だったのかもと思ったり。自身が積み上げた絆に背を押されながらありたい自分を選択し続ける咲太の姿にそんな強さを見た
読了日:01月09日 著者:鴨志田 一

一歩一歩私のペースで進む私の道。優しさが繋がって紡がれる新章スタートのエピローグにしてプロローグ花楓編。思春期症候群の試練を乗り越えた先で地に足をつけてゆっくりと自分らしさを取り零さないように進む事の尊さを梓川兄妹の何気ない、でも何物にも代え難い冬の日の日々を通し描く。ファンタジー要素の思春期症候群は前振りのみでじっくりと迷いながらも未来に向けて確かな一歩を踏み出す花楓を描く前巻のエピローグ的な位置づけの物語で多くの人の出会い後押しを受けながら自ら一歩踏み出す彼女の姿がとても清々しい気持ちにさせてくれた
読了日:01月09日 著者:鴨志田 一
読書メーター
▼関連記事
読んだ本(2018)
読んだ本(2017)
読んだ本(2016)

にほんブログ村


Tag: ライトノベル